Kazakh

手仕事の気配

日常的に手を動かしてものを作る、そういう暮らしの中にいる人々が、大好きです。

手仕事の気配を感じたくて、カザフの遊牧民の手織りの帯、テルメ・バオを夫の帽子につけました。

カザフの子供達は、お母さんの手仕事をする背中を見て育っているのだろうか。そう思うと、私も焦らざるを得ない。残したい価値観と風景は、自分も実践して残せばいい。

お母さんの壁掛け・トゥスキーズ〜想いの輪廻〜

昨年、私はカザフ人の町、ウルギーで古い壁掛けを手にしました。完全な形では無く、切り取られた跡もありました。

家族のために刺繍され、家を飾るという本来の役目を終えて、今私の元に来たこのトゥスキーズ。かすれて読めないけど、「〇〇へ 1963」と刺繍されている。どんなお母さんが、どんな子のために送ったのだろう?

私は、消えないお母さんの想いに後押しされて、家族と子供達にこの古いトゥスキーズで服を縫うことにしました。一着目は、1963年に縫われたこの布で自分が袖を通す分を縫いました。

今年、この誂えたベスト(ミシペット)を着てウルギーへ訪問しました。みんな珍しそうに振り向いて笑ってくれました。

いいねいいねと言ってくれた鷹匠のお宅の娘さんに、着てもらって撮った写真がこれです。

私の手元には、今、役目を終えたトゥスキーズが数枚かあります。ハサミを入れられない気持ちと、刺繍との対話を繰り返し、じっくり形にしようと思います。

会ったことのないカザフ人のお母さん、あなたの想いに私の想いをちょっとだけのせていいですか?

Text by Kei Hompo

 

 

初夏のモンゴル訪問2017-1

去年に引き続き、初夏のバヤンウルギー県と中央モンゴル地域、今回はドンドゴビ県へも駆け足で取材してまいりました。主に、ようやっと着手できたプロジェクトのためがメインでした。

兼ねてからのライフワークである、妊婦さん『大地に住まう母』を追いかけることによって派生した新プロジェクトです。

私は、カザフ人の生活に、お母さんの手仕事が根付いてることに静かな感動を覚えていました。

遊牧生活に欠かせない外着の「チャパン」。ハレの日には、カザフ文様の刺繍が施されたチャパンを着ます。街で既製品も売られていますが、お母さん、奥さんの手仕事で誂えられるものです。チャパンだけではなく、ハレの日の衣服全般に刺繍は施されています。

私は、この「チャパン」を通して見える世界を追いかけることにしました。

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そして、もう一つ。

カザフ人の地、バヤンウルギーで10年前に出会った「トゥスキーズ」。遊牧民の移動式住居、ウイの中、際立って目についた壁に飾られた刺繍布がそれでした。

この壁掛けは、お母さんから娘へ送られるものの一つです。奥さんたちが自分の家用にも誂えてます。いろんな想いが込められているんだよ、そんな話を聞きました。

お母さんの想いが、宇宙までつながっているように感じるトゥスキーズ。それを、私は自分の家族へのそれと重ね、母としての自分自身も含め、母の想いの形を追いかけることになりました。

妊婦さん『大地に住まう母』を撮り始め12年経過。沢山のことに出会いました。私にとって、全ては同一線上にあります。今回は短期間のモンゴルの西地域、バヤンウルギー県滞在でしたが沢山勉強になりました。

お披露目できるまで、少しずつ報告をしていきたいと思います。

旅の後半は次の記事に。

Text by Kei Hompo